車の挙動で通称「タコ踊り」と呼ばれている現象がある。それは、車体が左右に大きく尻振りを繰り返し、立て直そうとしても尻振りが止まらず、運が悪ければ何かに衝突して事故になってしまう恐ろしい現象だ。実は私もＢＮＲ３２を運転中に、この「タコ踊り」を踊ってしまったことがある。
そこはいつも通る家の近所の道だった。高台の住宅地へ通じる上りの右コーナーで、センターラインのある片側１車線の道路だ。右側は石垣になっていて左側は縁石で高くなった歩道があり、交通量は少ない道路だ。コーナーのキツさは、２速でエンジンの回転がターボ域になんとか入る速度で走れる程度だ。私はそこを通る度にいろんな走り方を試しながら走る習慣になっていた。つまり、そこを通る度にチョット遊んでいたのである。
その日はコーナーの後半でアクセルを多めに踏込んで、脱出速度を少し速くしてみようと思って走った。コーナーを回り込んで対向車が来ないのを確認してからいつもより少し速めに、そして多めにアクセルを踏み込んだ。旋回Ｇと加速Ｇを気持ち良く感じながら、ハンドルを戻すタイミングに神経を集中した。すると次の瞬間突然、目の前に石垣が現れた。オーバーステアになりフロントが回りすぎたのだ。その後に起きたことで覚えているのは、タイヤが２回悲鳴を上げたこと、ものすごい速さでハンドルを左へ右へと切ったこと、それと手が滑ってハンドルがうまく回せなかったことだけである。その時にペダル操作は何をどうしたか何も憶えていない。その後１０秒くらい放心状態になり、冷や汗が出た。そんな状況で事故にならなかったのは運が良かったからだと今でも思う。
「タコ踊り」は、運転が未熟な者がよくやってしまう現象だ。原因は、パワーオーバーステアやリバースステアになった時、あるいは危険回避などで急ハンドルを切った時の尻振りに対処するカウンターステアが、遅い上に切り過ぎることにある。ステアしてから車が進路を変えるまでには時間の遅れがあるので、ハンドルを素早く左右に切るとハンドルの動きと車の動きが逆になり、尻振りが収まるどころか大きくなってしまうのだ。そうなるとスピンして止まるか、車速が落ちて収まるまで尻振りは止まらない。それはそれは、恐ろしい現象だ。でも、他人が「タコ踊り」をやってるのを見るのは面白いぞ！！
１９９９/０８/２１